マーケティングリサーチとインターネット調査

前回の記事ではマーケティングリサーチの種類と手法をまとめました。複数ある手法の中でも、費用を抑えて手軽に行えるインターネット調査が近年主流になっていますが、調査票の設計において注意すべきポイントをセミナーでいくつも学びました。設計から集計までの流れに沿って、留意点を詳しくまとめていきます。

インターネット調査の設計から集計まで

1)調査対象者の選定

例えば、炭酸飲料における売上げ不振の仮説として、「一人あたりの購入数の減少」があがったとします。炭酸飲料の飲用者を対象に調査を行うと思うかもしれませんが、飲用者イコール購入者とはならないので注意が必要です。

洗剤やシャンプーのような家族で共有する商材の場合、事前にスクリーニング調査と呼ばれる対象者の絞り込みを行うことで、仮説の検証に必要な特性を持つ人たちを集めることができます。例えば「1か月以内に炭酸飲料水を購入したことがある」という質問をし、スクリーニング調査対象者の中から「炭酸飲料の購入者」という特定のターゲットに絞り込みます。また、性別・世代・地域別や競合ブランドの購入者なども対象に含めて調査することで、調査結果を比較してより詳しく分析することができます。

2)サンプル数の選定

炭酸飲料の売上げ不振について調査を行う場合、対象者は炭酸飲料を購入する日本人全員(母集団)です。しかし全員にアンケートをとることは難しいため、実際にはこの母集団の一部を調査することになります。対象者の絞り込み方法によっては、対象者全員の回答とピックアップした対象者の回答に誤差が生じてしまいます。もし誤差±5ポイントで70%の人が毎週購入していると出た場合、実際には65%〜75%の人が毎週購入していることになります。サンプル数が多いほどこの誤差は小さくなりデータの精度は高くなりますが、同時に調査コストも高くなってしまいます。どのくらいの誤差であれば許容できるのかを検討し、サンプル数を決定します。

3)質問項目

調査で知りたいこと(つまり仮説です)の案を出し、調査項目に反映していきます。

炭酸飲料の売上げ不振における「1人あたりの購入数の減少」を検証する際には、購入量、購入頻度、リピートの有無とその理由といった項目に分けられます。

4)回答形式

回答形式には大きく分けて「選択肢」と「自由記述回答」の2つがあります。各回答形式の種類について具体的に紹介していきます。

選択肢:プリコード型とも呼ばれます。回答者は質問内容を理解しやすく、集計も簡単です。

・単一回答:当てはまる選択肢を1つ選ぶ

 複数選択の中から1つだけ選ぶ場合は、ラジオボタンと呼ばれる円形ボタンを使用します。

・複数回答:当てはまる選択肢を全て選ぶ

 複数選択してもらう場合には、四角いチェックボックスを用います。

・制限回答:定めた個数の選択肢を選ぶ

・割合回答:合計が100%になるように各項目に割振る

・順位回答:選択肢の中から順位をつけて回答する

・マトリクス回答/対マトリクス回答:共通の選択肢に対して複数の項目を回答する

マトリクス回答

対マトリクス回答

全ての事柄に「はい/いいえ」で回答できるわけではないので「どちらともいえない」を入れたほうがより自然になります。また、段階評価では対になる選択肢の度合いを揃えることも大事で、一方が「非常に良い」なら、もう一方も「非常に悪い」にします。複数選択肢の場合、選択肢の表示順が回答に影響を及ぼす可能性があるため、ランダム表示にする必要があります。

 

自由記述回答:回答時間だけでなく集計や分析にも時間がかかりますが、選択肢にはない自由な回答を得ることができます。回答者が何について回答すればいいのか具体的に考えられるような質問文にします。

例えば「あなたが、炭酸飲料を購入する際に最も重視する点について自由にご記入ください」という質問文だと、最も重視しているポイントがすぐに思い浮かばず、回答されない恐れがあります。なので、まずは単一回答で重視したポイントを答えてもらい、次にその点についての自由回答を促します。

5)質問文

対象者や質問内容に合った言葉遣いで質問するように心がけます。

簡潔に

短文で明瞭な文章が望ましいです。
特に表示画面が小さいモバイル調査では、簡潔で短い文が求められます。


専門用語などは
使用しない

難しい漢字や流行語、専門用語などの使用は避け、誤解を招かない内容にします。

曖昧な表現は避ける

例えば大量購入を「一度に3本以上の購入」と言い換え、大量購入の定義をはっきりとさせます。

回答者のレベルを
数値で判別させる

例えば愛飲者の情報が欲しい場合「あなたは愛飲者ですか」と質問するのではなく、最初に消費頻度を選択してもらいます。そうすれば回答者が愛飲者かどうかを数値によって客観的に判別することができます。

複数の意味を尋ねない

「美味しくて健康に良いと思いますか」など、1つの質問文で2つ以上のことを聞かないことが大切です。複数のことを尋ねたい場合は個別の質問や選択肢に分けます。

回答に負担がかかるものは
尋ねない

5年前から現在に至るまでの購入経歴といった、すぐに回答できない内容は避けます。

思い込みを避ける

「話題の炭酸飲料」や「流行りのフレーバー」など、解答前から先入観を抱かせる単語は使用しないように気を付けます。

 

6)質問の順番

過去から現在そして未来のように時系列になっているか、単純な質問から始まり、後に行くほど複雑な質問になっているか、など回答しやすい順番であるか確認します。また、重要な質問は先に表示しておき回答漏れがないようにします。

7)調査票のレイアウト作成

回答者が負担を感じないボリュームかチェックし質問量を調整していきます。盛り込みたい要素が多いと、どうしても質問数は増えてしまいますが、必要性が低い質問や重複しているものは削除します。日本マーケティングリサーチ協会が定める一般的な適量は30問ですが、それよりも少ない20問以内に収めます。

また、インターネット調査の場合はアンケートの進捗度(残りX%、2P/5Pなど)を表示させることで途中離脱を防ぐように工夫します。

8)実際に回答してみて修正する

自作したアンケートに答え、快適に回答できるか確認をとります。調査目的・仮説の検証に必要なデータがきちんと得られる内容になっているか、全体を確かめて修正します。

9)集計

調査で得た結果はまず単純集計で全体の傾向を読み取り、次にクロス集計で細かく分析していきます。

[単純集計]定量調査では調査結果を数量的に集計して分析を行います。棒グラフ、円グラフなど基本となるのがこの単純集計で、全体の大まかな傾向を掴むことができます。下図の場合、全体としてスマートフォンの割合が一番高いことが分かります。

[クロス集計]:そして、単純表の回答者全体を女性・男性、年代別などの項目分けにしたものが「クロス表」です。また、これらの項目は「分析軸」と呼ばれます。性別・年代別の特徴を見る場合は横(表側)に見て、性別・年代ごとに比較する場合は縦(表頭)に見ていきます。単純計算では全体の傾向としてスマートフォンの割合が高いことが分かりましたが、ここではスマートフォンと答えた中でも特に男性20代の回答率が高いことが読み取れます。このように、単純集計とクロス集計を使い分けて調査結果を分析していきます。

まとめ:インターネットリサーチについて

比較的安価に素早く行えるインターネット調査は、日本のマーケティングリサーチの約半数で行われているとセミナーで紹介されており、調査の主流になっています。また、スマートフォンでの回答率も年々高くなっており、男性と比べて女性の方がスマートフォンで回答する傾向が強いといった特徴もすでに出てきています。特にモバイル調査では画面が小さくページスクロールも面倒を感じさせるため、モバイルフレンドリーを意識した設計が求められるなど、まさにインターネットの利用環境の変化に対応した調査方法だと感じました。

しかし、インターネット調査にはデメリットもあります。当たり前のことですが、回答者はインターネット利用者に限定されます。例えば高齢者が対象の場合、インターネット利用率が低い世代なので回答できる人が限られてしまい、偏ったアンケート結果になります。高齢者全般を対象にしたいのに、実は「インターネットを利用する高齢者」に絞ってしまっているのです。手軽に調査を行える反面、インターネット調査の結果にはインターネット非利用者の意見は含まれていないというマイナス点はどのセミナーでも強調していた点です。インターネット調査だけに限らず、どの手法でも必ずデメリットはあるので、その点も考慮した上で調査方法を選定しなければいけないと強く感じました。

まとめ:全体を通して

セミナーではアンケート設計がしやすい例を用いてマーケティングリサーチを解説していましたが、実際には調査内容が複雑で回答しやすい質問文にできないものや、回答数が集まらない場合もあると思います。そういった場合の改善方法など、設計してみないと分からない部分はまだまだ多いと感じました。また、調査会社に依頼すれば簡単にマーケティングリサーチが行えて、調査結果が得られるという単純なものではないという印象も受けました。何を明らかにしたくて、そのためにはどんな情報が必要になるのか。これらの情報をマーケティングリサーチ会社に依頼する前に、まず自分で知っておかなければ調査の設計はもちろん、対象者も選定できず十分な調査結果を得ることができないからです。

今までは「アンケート」という完成されたものしか見ていませんでしたが、今回はそのアンケートがどうやって設計されているのかを学ぶことができました。質問文一つ一つがデータを得るためにじっくりと考えられたものであることを理解し、基礎知識が身につくだけでなく、アンケート全般に対する見方が変わる良い機会になりました。

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